♯39「東北が育てる農業の未来」株式会社グランパ代表取締役社長 阿部隆昭さん

posted 2012/12/27 category 未来への教科書 Documentary Report

産業の復興と被災地の新しい雇用を目指して

 株式会社グランパは今年の8月、レタスを中心とした施設園芸「グランパファーム陸前高田」をオープンした。コンピュータで環境管理をしながら、毎日収穫をして毎日植えるという全く新しい形の植物工場となっている。天候に左右されず、毎日出荷できる安定した生産。また研修を受ければ誰でも企業ができ、土地、資金、そして販路までも提供できる仕組みを作った。成功の裏には、阿部さんの28年越しの決断があった。

「稼げない農業」を、いつか「稼げる農業」に

 阿部さんは青森の生まれ。農業を身近にして育ったが、収入の不安定さが気にかかっていた。銀行員として勤めた28年間、主に資金の貸し借りをする部門に携わった。しかし日本の銀行は、既に成果を上げている企業にのみお金を貸すスタイル。「ゼロからでも企業は出来るはずだ」。二年間、アメリカやヨーロッパの金融商品についてを学んだ。危機を感じていた日本の農業の未来。銀行を退職し、エアドーム式植物工場を開発するに至った。

どのような支援が実現しているのか

 経産省からの補助金の交付を受け、被災地支援として産業の振興、雇用の創出が期待されているグランパファーム陸前高田。現在農場で働く人間23名中、22名が地元からの採用だ。主に漁業を営んできた人や、一般家庭の主婦で成り立っている。まずは仕事を失ってしまった人達の雇用、そして畑が潰れたことによって出て行ってしまった農業者を再び呼び戻せるような環境作りに取り組んでいる。基盤作りが出来れば若手も参入してくるのではないかと期待している。

復興に対する思いを一緒にスタートさせてくれた、陸前高田市

 今は軌道に乗っているグランパファーム陸前高田だが、被災地での土地の確保に苦労した面もあった。様々な地方自治体に声をかける中、比較的早い段階である程度の土地を用意し、理解を示してくれたのが陸前高田市だった。「この土地に、いろんな技術的なものを検証する研究開発が出来る場所、若い人にそれを理解してもらう研修の場所、そういった施設も将来作りたい」。新しい農業が発信出来る、そんなエリアでありたい。そんな思いを抱えて、今日も活動を続けている。

BS12ch TwellV

12月18日(火)、25日(火)18:00~19:00
12月23日(日)、30日(日)早朝3:00~4:00