#23「アクセンチュアと会津若松市 ~金継ぎでつなぐ復興の道」福島イノベーションセンター長 中村彰二朗さん
アクセンチュアの復興プロジェクト
経営コンサルティング企業アクセンチュア株式会社は、福島で雇用を創出するため、昨年9月に会津若松市に福島イノベーションセンターを設立した。センター長である中村さんは生活の拠点を福島に移し、準備、設立に次ぎ、魅力ある都市づくりを目指してプロジェクトを進めている。
設立して最初の4カ月は、市や大学の方々と復興プラン・施策を練ることに費やした。現状を把握し、未来を見据えた上でどうしていくかという計画作りだ。合意を得、全17施策を進めていくこととなった。風評被害の回復、企業誘致、中にはモデル都市会津若松を目指し、少なくとも3年はかかるものもある。「地域の魅力をどう外に出していくか」という考えのもと、一つひとつを確実に進めている。
会津の伝統工芸品をどう外に発信していくべきか
12月、「金継ぎ」のデザインを施したiPhoneカバーを制作するプロジェクトを展開した。すでに存在した漆塗りのiPhoneカバーに魅せられた中村さんが、制作者と意見を交わし、自社バージョンを作ってもらうことになった。
金継ぎは、割れた陶磁器を漆で接着し継ぎ目を金で飾る、日本独自の修理法。iPhoneカバーにデザインすれば、世界中の人に使ってもらえる可能性がある。まずは国内市販からと、初版を社内販売で展開した。社員がクライアントと会うと、「それはなんだ」という話になり、言葉で説明をする。「金継ぎのデザイン」であることがわかりにくかったが、それを説明することにより、コミュニケーションが盛んになったという。それが成果を生み、約500本のオーダーに繋がった。次は世界へ向けての展開を考えている。
また、この金継ぎは福島イノベーションセンターのテーマでもある。原型に戻すだけではなく、以前よりも価値があるものとして蘇らせる技術を、復興を成長戦略ととらえ価値ある日本を創造することを目指す会社のビジョンに重ねた。会津の漆で福島を、そして日本を金継ぎする。それがアクセンチュアの復興プロジェクトとなった。
地域での人材育成と企業との関係性
企業誘致のためには、これからの時代に必要とされる人材をこの地で育てる必要がある。海外に比べ圧倒的に不足している分野の人材を育てることが出来れば、それを欲しがる企業が集う。しかし「会津でなければ駄目」というものがなくては、コストの問題などですぐに他の地へ移ってしまう。「その地域とどういうふうに自分たちの企業が育っていくかという、もう切り離れないくらいの関係性というのを、まずお互いに考えないと」。東北進出を考えている企業があれば、「まずは滞在を」とアドバイスするという。一時間や二時間の訪問では、地域の方々がどんな事に喜びを考えてどんな事に今悩んでいるかなど、なにもわからない。「まずは居て、話をすることだ」と中村さんは語る。
復興で終わるのではなく、これからもずっと地域に根付いた企業でありたいと言う
会津にセンターを構えたきっかけは震災からの復興であるが、それを達成したとして撤退をするつもりはない。5年後、復興がテーマではない産業があり、人材が豊富にいて、日本のあるべき姿としてのセンターがそこにある、そんな形を夢見ている。「ここに、会津大学と共にずっと人材育成をするセンターであり続けたい」と語った。
BS12ch TwellV 4月21日、28日に放送されました。