#32「あさか開成高校演劇部~心を語り、心が繋がり、心を継ぐ
東日本大震災後、未曾有の被害をもたらした原発事故。2011年8月に行われた「総文祭」に向けて準備をしていたあさか開成高校演劇部は、事故の影響で劇の内容を大きく変更した。テーマである「ほんとの空」を感じられなくなってしまったこども達。それぞれの想いを即興劇として繋げ、「この青空は、ほんとの空ってことでいいですか?」のタイトルで世に打ち出した。
福島で初上演したこの作品は人々に高い評価をもって受け入れられ、震災一年後である2012年3月11日には東京公演を実現させた。そして3年生の卒業と、春からの新入生の加入。新しい顔ぶれとなり、さらに横浜での公演に向けて力を合わせていった。
「お前の今の気持ちは何なんだ」。努力の役作り。
新生の部は卒業生の抜けた穴を埋めるため、まず各役を再編成するところから始まった。部員の美田尚輝くんは、前回演じていたキャラとは真逆のキャラクターに割り当てられ、そのギャップに苦労した。「迫力やら想いの違いやらでただの力入っている人にしか見えなくなっちゃって。その時に今野先輩(前役者)のアドバイスを受けて、俺を真似をしなくていいよって」。辿りついたのは、自分のエピソードを新しい役に盛り込むこと。こうしたそれぞれの努力の役作りが、舞台を成功へと導いていた。
何かを演じることは、相手を理解すること
横浜公演の翌日は、市内で横浜の高校生との交流ワークショップが開かれた。台本を見せ、横浜の高校生たちに演じさせてみる。「あんまり上手にやろうと思わないで。ちょっとお互い見合ってごらん」。
それぞれが勝手に演じるのではない。何かを演じようとする時にその役の人の事を真剣に考えること。真剣にその人の色んな事を感じようとすること。一人ではできない、相手を理解するという作業だという。だから、例え自分が体験していない震災についての台詞だとしても、テキストを通して一緒に近づき考えればお互いを理解するきっかけとなる。交流ワークショップは、確かにお互いに得るものがあった。
演劇によって広がった輪はまた一回り大きく広がろうとしている
知り合いの紹介で横浜公演とワークショップに足を運んでいた寺下正博さんは、広島県で小学生を中心としたこどもミュージカルを企画しているという。「上級生が下級生に伝えていくっていう作業をすごく大事にしていかなきゃいけないんじゃないかな」。被災地の高校生が描く等身大の気持ち。あさか開成高校演劇部の想いは、舞台という媒体を通じて確実に広がりをみせている。
BS12ch TwellV
9月4日(火)、11日(火)18:00~19:00
9月9日(日)、16日(日)早朝3:00~4:00