♯34「原発事故が引き起こしたもの~医療、行政、観光から見る福島~」南相馬市立総合病院 医師 原澤慶太郎先生
ただの治療に留まらず、疾病の予防や健康維持で地域の高齢者をサポートする「地域医療」の活動をしていた原澤さん。2011年11月、後輩医師に呼ばれ、福島県第一原発から23kmに位置する南相馬市立総合病院へとやってきた。震災が起きてから半年以上、未だ仮設住宅での生活を余儀なくなれていた住民たちは、常勤医として腰を据えた中期的な支援を必要としていた。
被災地の病院で仕事を続けるうちに、医療的な側面でも厳しい環境にあることが分かってきたという。まず、仮設住宅のような人口が密集した場所に高齢者が多いため、感染症のリスクが高い。しかし、もし集団感染を引き起こして多くの入院患者が発生しても、病院にはそれを補うほどのベッド数がない。ベッド不足は、看護師不足が原因だという。
どうやって看護師を増やしていくべきか
病院の機能は看護師の数で決まるのだという。看護師ひとりにつき○床、と規定があるため、医師やベッドそのものの数はあっても、看護師がいなければベッドは使えない。放射線量がゼロではない中、どうやって看護師を増やしていくかというのも重要な課題のひとつだった。
今考えられているのは、子育てを終えた40代50代の元看護師に、再教育を施して現場へ戻ってきてもらうというシステムだ。結婚や育児などの理由でそもそもの離職率が高い看護師。今回の被災地に限らず、在宅医療や地域医療の手伝いが出来る看護師の教育モデルが、この地で実験的に出来るのでは、と原澤さんは考えている。
生きたいから薬を飲む。被災者の心のダメージ
さらに根本的な問題は、かつて営んでいた生活を失った被災者が、生きがいを無くしてしまったことだという。畑を流されて「生きてる意味がねぇ」と薬を飲まない人がいる。「何が彼らの生きがいかっていう部分にフォーカスしていかないと」。薬を飲むために生きているのではなく、生きたいから薬を飲むのだということを、原澤さんはこれまで以上に強く感じていた。
そして子ども達にも定期的なカウンセリングが必要だと語る。避難先の学校で苛められて帰ってきたという話を聞き、そういった子どもは多いのかも知れないと考えてのことだ。未来ある子ども達をフォローしていく方法を模索している。
地域を診る
現在では、保健師の方と勉強会を開いて情報交換をしたり、高齢者が作った工芸品を販売して子供達の教育に関わる資金に充て、子供たちと高齢者の交流を図るきっかけ作りをしている。これは地域の活性化と、高齢者の生きがい作りにも貢献しているそうだ。
地域に密着し、人々に寄り添いケアをする地域医療。取り組んでいる様々な問題も、医学的に理由付けがされると、市民も動きやすいと原澤先生は語る。
BS12ch TwellV
10月2日(火)18:00~19:00 ※プロ野球中継のため休止
10月9日(火)18:00~19:00
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