#35 「釜石市立釜石東中学校 未来を担う子どもたちのために」平野美代子先生

posted 2012/10/24 category 未来への教科書 Documentary Report

「実際はこうなんだよという部分を発信できたら」

 昨年の震災で津波にのまれ全壊した釜石市立釜石東中学校。校舎にいた約220人の生徒たちは高台に逃げ、奇跡的に全員無事だった。

 元々生徒達の写真を撮るのが好きだった平野美代子先生。メディアの報道する「枠の外が見えてこない切り取られた写真」に疑問を感じた。もう持つことはないだろうと思っていたカメラを再び手にし、株式会社ニコンの支援を受けて「中学生フォトブックプロジェクト」が立ちあがった。一年目こそ「後にも先にも経験しない忙しさ」だったと言うが、二年目の今年はカメラの実技的な知識や技術を身につけ、メッセージを伝えられる写真を撮る事を目標に、子ども達とフォトブック製作に打ち込んでいる。

自分たちの足で歩いて聞いた事、感じた事を伝える役割を担わせたい

 震災直後は10キロ離れた別の中学校で授業を受けていたが、今年4月に仮設校舎が建ち、ようやく元々学校があった地域に戻ってくることができた。今後は子ども達が取材する側へとまわり、地域の人々をインタビューする計画だ。地域の人々が地元の中学生に求めるものを聞き取り、受け止めて発信する役割があるのではないか。釜石の代表として「本当の声」を伝える中学生カメラマン。「どこまでできるかわかんないですけど、夢ですね」と平野先生は語る。

 また、子ども達への良い影響も期待している。学校で教えるだけではなく、学校から切り離し、違った物の見方を地域の人々に教えてもらえるのではないか。地域にはその力があると考えている。

支援をする側される側という関係ではなく、ともに生きていく仲間でありたい

 7月10日、岩手県の内陸にある北上市立東陵中学校との交流会が開催された。「第1回岩手の未来を創る仲間の集い」と題された合唱交流会で、この日のために練習してきた曲を互いに披露した。直接的な被害を受けなかった内陸と、沿岸部の子ども達との交流。「(沿岸の子ども達は)永久に支援を受け続けるわけにはいかない。いつか自分たちの足で動き出す時が来る」。支援をする側される側という垣根を越え、対等な立場でお互いを見ることが、それぞれの頑張りに繋がるのだという。

数字で評価される既存の教育からの脱却

 「第1回岩手の未来を創る仲間の集い」では、生徒達それぞれに自分達で考えた係の仕事が課せられていた。大人が思いつきもしなかったユニークな発想。自主的な役割は責任感と楽しさを生み、子ども達は生き生きと活動することができた。「別に私が、ここが良かったここがだめでした、なんて言わなくたって、もう自分の中に多分あるんですよね、答えがね」。数字で評価するのではなく、様々な経験を積ませ、面白いことを知ってもらいたい。教育の可能性をこれからも追及していきたいと平野先生は語った。

BS12ch TwellV

10月16日(火)、23日(火)18:00~19:00
10月21日(日)、28日(日)早朝3:00~4:00