#36 「自然と共存する社会」共存の森ネットワーク理事長 澁澤寿一さん
大槌町吉里吉里地区で、共存の森ネットワークによるボランティアツアーが開催された。共存の森ネットワークとは、「聞き書き甲子園」という活動を10年前から行ってきたNPO団体。高度経済成長が起こる1960年以前の暮らしをしてきたおじいちゃんおばあちゃんの話を、高校生がインタビューし、記事にするものだ。
吉里吉里地区は東日本大震災の被害を受けており、未だ避難生活を続ける人達に震災以前の記憶を蘇らせるべきではないという意見もあった。しかし被災地の人々に「聞き書き甲子園」の話をすると、「是非来てほしい」という答えが返ってきた。吉里吉里地区に誇りを持つ彼らは、かつての姿を記録し、その上で復興をしたいと考えていた。そうして完成した聞き書きの本を現地に届けよう、と企画されたのがボランティアツアーだ。
井上ひさしの小説「吉里吉里人」の舞台ともなった吉里吉里地区は、三陸沿岸の豊かな自然に恵まれている。震災後は災害対策本部を立ち上げ、瓦礫の撤去や避難所の炊き出しを自分達で行うなど、住民の結束した強いコミュニティがあった。共存の森ネットワーク理事長の澁澤寿一さんは、吉里吉里地区にこそ自然資本に基づいた暮らしがあり、この地が復興していく中にこそ、未来につなげる社会の1つのモデルがあるという。
ツアーには100名以上が参加。老若男女問わず多くの人が集まった
まず開催されたのは、地元の人に地区を案内してもらうミニツアーだ。現地の人からは、この日のために開かれた特産物の直売所や、昼食の手作りカレー、「虎舞」と呼ばれる郷土芸能の披露など多くのふるまいがあり、参加者は顔を綻ばせていた。
ツアーの目的は少しでも多くの人と人との接点を作ること。ボランティア作業はあくまで、地元の方々と一緒に汗をかき、空間、時間の流れ、空気の匂いなどを共有をし、コミュニケーションを取る入口だ。被災地の一人ひとりが今何を思っているのか。一対一の人間として本音を語り合い、その人の人生を受け止めることが復興への一歩だ。
本当の地域づくりとはどういうものか。澁澤さんは、若者に「自分の人生の設計」を考えてほしいと言う。「決してお金だけの設計ではないはずなんです」。その土地に根ざして生きてきた、おじいちゃんおばあちゃんが持つ生き方や価値観を若者に繋げること。自然の中で喜びを感じられる社会、自然と共存して暮らせる未来作りを夢見ている。
BS12ch TwellV
11月6日(火)、13日(火)18:00~19:00
11月11日(日)、18日(日)早朝3:00~4:00