今年度 第1回目の出前授業が開催されました ( いわき市立平第三中学校① )

posted 2019/01/08 category Blog

12月6日、福島県いわき市立平第三中学校にて出前授業が開催されました。

この日は、食、医療、教育など様々な分野で活動される4人の方々を1日先生としてお招きしました。

 

最初の先生は、お米のブランディングなどを手がけていらっしゃる本田勝之助さん(本田屋本店有限会社代表取

締役)でした。

 

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震災によって×(バツ)のイメージが着いてしまった福島県を、人や物を掛け合せることで(×かける)、発展

させて行くことをテーマにお話しいただきました。

<東日本大震災以降の東北ブランディングの変化と、これからの福島>

福島のものは安全でないという負のイメージが付いてしまったため、大打撃を受けた農業。現在でも半分は福

のブランドイメージは回復してない現状があります。このブランドイメージをどう転換させていくか。

・×(バツ)ではなく×(かける)

地元の人々が福島のものが売れなくなっていくことに不安を感じている一方で、福島のために何かしたいとい

う人は日本だけでなく、世界中にたくさんいる。福島の×(バツ)イメージを×(かける)イメージ、つまり

福島と他の地域の人々がつながるチャンスだと捉え、一見負に見えるイメージを、みんながなにか福島のた

めに何かしたいときに、後ろを押してくれる要素として生かしてほしい。

 

<近い将来に向けて>

生徒さんのお父さんお母さんがしている仕事の4割が新しい、クリエイティブな仕事に取って代わられる20年

30年後を見据え、それぞれのニーズを見極めて、「こんなのほしかった」って言われるようなものを自分

自身で作っていく必要性を話して頂きました。

・誰かとクロッシングして働くこと

人という生き物は相手にレッテルを貼りやすいものだが、レッテルを貼った瞬間に視点の数が固定され、思考

が止まってしまう。しかし誰かとクロッシングして働くことで、今まで届かなかった視点でサービスを考え、

新しいニーズを見つけていくことができる。

 

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続いて、各クラスから1名ずつ代表の生徒さんに参加いただき、復興支援メディア隊の榎田智子がファシリ

テーターとなり対談が行われました。まず最初に、事前学習で本田勝之助さんに質問したいことを

挙げた生徒(会場)から質問を受け、それに本田さんが答える形でスタートしました。

 

生徒:会津で、避難すべきかどうか悩んでいた時に、福島で支援することを決めた一番のきっかけはなんです

   か?

本田:震災当時は、避難指示が出ている一方で、詳しく放射能の影響について知っている人がまったくいませ

   んでした。だから自分たちで情報を集めて、悩んでいました。ですが、元来、どっちみち避難したくな

   い、という気持ちがあったこと、日々避難すべきかどうか自分で情報を集めて判断するうちに、これな

   ら大丈夫だ、という自信を培い、福島で支援することになりました。

生徒:ブランド品を県外に提供する中で、一番反響の大きかったものはなんですか?

本田:震災当初は起き上がり小法師でした。工芸品なら放射線の影響がないという安全面に加え、メッセージを

   残したいという人々に国内外問わずとても反響がありました。みんなが何か福島のためにしたいと思って

   いる、そういう気持ちを表す時に、工芸品はすごく力を発揮しました。現在反響の大きいものは日本酒で

   す。福島の日本酒は日本一とされ、海外にも人気がある。売れるし、どんどん美味しくなってきていま

   す。

 生徒:中長期的に福島を支援する人を集める上で、一番努力したことはなんですか?

本田:将来的に必要になる支援を先読みし、それをわかりやすく支援できる人に伝えることです。今必要な支援

   は刻一刻変わって行きます。また、中長期的に支援出来る人はとても限られています。だからこそ、そう

   いった人たちを見つけ、その人たちが届くところまで情報をデリバリーすることがとても大切です

生徒:中学生にできることはありますか?

本田:まず、3つの円を書いて見てください。

    自分ができること、社会、地域に求められていること、自分がしたいこと。

    3つの円が重なったところが、自分が進むべき道です。これは震災時から今まで、共通しています。そ

   して、自分でできることを、普段の学校生活で増やすこと、社会、地域に求められていることを、しっ

   かりと調査し人に聞いて、理解すること、自分がしたいことを日々自問自答し、シミュレーションして

   みることがとても大切です。

 

<対談>

 生徒:具体的にどういう風にして、海外の企業に、ブランドや、福島の伝統的な会津木綿とかをどういう風に

   つなげていきましたか?

 本田:震災の前から、海外の人や企業との繋がりはありました。

    実は海外は、皆さんが思うほど遠くはなくて、行ってみると、改めて日本の豊かさに気づかされる事が

   多々あります。世界中から認められる日本のものづくりの技術は、もしかしたら欧米よりも上かもしれな

   い。そういう日本の良いものを、海外でも広めて、喜んでもらいたい、そういう思いを口に出して、行け

   るのなら実際に現地に行ってみると、自分たちと繋がれる人に出会う事ができる、実現できる。

 榎田:海外でもとりわけ、トップクラスの人を巻き込んで何かする時には、どんな苦労がありましたか?

 本田:相手にとって会う価値のある人間にならないと相手は会ってくれない。まさにギブアンドテイクの世界

   で、自分は日本の伝統工芸に関わる人をよく知ってるし、きちんと繋がってるよ、相手の役にたつよって

   いうことをアピールする。

 本田:みんなの意見から、福島を自分ごとに考えている事が伝わってきました。それはどうして?

 生徒:小学生の頃は東京に憧れてたけど、震災後に、福島が大変なのを見て、それから何かあると福島、頑張

   れって思うようになった。悪い経験が、福島のためになったんだと思う。

 榎田:福島のために、自分が出来そうな事、やってみたい事はありますか?

 生徒:福島のために些細なことから手伝って行きたい。僕は運動が得意です。

 本田:実は日本は、健康意識は世界的に見て高いんだけど、運動意識は低い。だから運動は、これから国内で

   大きくなっていく市場でもある。特にデータと組み合わせた運動市場は将来の福島を助ける市場でもあ

   る。

 生徒:僕は喋る事が得意です。

 本田:最近、GoogleがVRな時代だと言った。人に情報の8割を目から取り入れているのに対して、Googleは文

   字データから文字や言葉にならない情報を伝える戦略を考えている。喋る事も大切だけど、どういう技術

   で色々な情報を伝えるか考えるのも大事。文字がなくてもダイレクトに伝えられるような技術が、未来の

   仕事へとつながる。

 生徒:僕はふざけるのが好きです。

 本田:ムードメーカーってことだね。デジタル化が進むにつれて、人と人が会う時間をとても大切にするよう

   にる。多種多様な手段でいつでもどこでも繋がれる時代で、会う意味を再確認しているから。会いた

   い、会ってでしか出来ない、会う甲斐のあるムードメーカーがものすごく大切。みなさんには、福島に

   会いに来たくなるような、ナビゲーターになってほしい。

 生徒:私は復興支援で、おばあちゃんたちと踊ったダンスが楽しかった。

 榎田:年代が違う人たちとのコミュニケーションって楽しい?

 生徒:おばあちゃんと一緒に暮らしているわけではないので、とても新鮮だったし、おばあちゃんたちが一緒

   に楽しんでくれるのを見て、すごく嬉しかった。

 本田:ネット上には、ネットを使える人しか情報を上げない。

    でも、ちょっと前の世代の人たちは、ネットに載ってない、将来に役立つ経験や、時代を持っている。

   ぜひそういう人たちに会って、話を聞いてほしい。未来を作りたいなら、過去を学ばなければならない。

   もう1つは、病気になる人の減少から、病気を未然に防ぐ、予防治療はこれから伸びるということ。

   もし興味があったら、調べてみてほしい。

生徒:僕は、コンビニのレジに置いてある募金箱に、お釣りを入れたい。

本田:素晴らしい。ネット上では、みんな自分を見て欲しくていろんなことをする。でも、見えないところで

   やれることをコツコツする人は、人を惹きつけるし、すごいことを将来できる。

本田:今日の講演で、この一言は忘れない、という言葉を持って帰って、書き留めてほしい。

    これだけ福島のことを自分ごとにできるのは素晴らしいことで、絶対何かできる。もし将来、何か福島

   のためにしたいときは、相談したり、ぜひ自分を使ってほしい。今一番日本でチャンスに溢れているの

   は福島だから、ぜひ自分でそのチャンスをつかんでほしい。

 

<登壇した生徒さんに感想をいただきました>

・自分が今まで知らなかったところで、なんとかして福島のためにいろんなことをやってくれている人がいる事

 が学べた。もっと色々知りたいと思った。

 

・自分がいつも教えられている事と共通する事があった。自分が同じ状況だったら助けられないと思うけど、

 本田さんたちは、そういう場合になった時にしっかりと助ける事が出来てすごいなと思った。

 

・本田さんの話を聞いて、自分が小さい頃に地震が起きた時に、知らないところでいろんな人たちが自分を支え

 てくれて、そのおかげで今があると思うので、もっとお話しを聞きたいと思いました。また、その人たちに

 感謝をして、次そういう事があったら、自分も知らないところで助けてあげたいです。

 

・震災で少し放射線の印象が高くなった福島のために、日本の色々な場所や世界まで行って、良いイメージを伝

 えようとしてくれる人がいるのがすごいと思いました。